2008年直木賞受賞作。このタイトルでこの賞を受賞した作品ってどんな話だろうと思って読んでみました。うーん、あらかじめ大まかな内容(もうすぐ結婚を控えている女は父親と付き合っているという話)をなんとなく知っていたけれど、この父親は結婚相手の父親かと思っていたら、実父なのね。
こういう近親相姦ものって、サスペンスになるか、切なくなるか、やりきれない気持ちになるか、悲しい話になるか、異形な話になるか、だったりするけれど、この話は全くそういう展開はない。ただ憂鬱になる気持ち悪い話だった。少し事件が発生していたけれど(事件がメインの話ではないので、解決せず)。
現代を舞台にリアルにこういう関係を書くと、綺麗でもなく、悲しくもなく、ただ暗くて気持ち悪いんだ、と思う。
異質な世界を書いているのかもしれないけど。最終第6章までは蛇みたいな話で本当にただ気持ち悪い、ムカムカするだけだった。確かに、文章の表現は文学的で上手いし、現代から過去に話が進んでいく時系列は良かったと思ったけれど(外側(現在)から内側(過去)に話が進むのは、中身(餡)に向かって食べる饅頭みたい)。
なので、第6章だけを取り出して1作品にしても良いかも。主人公(花)は震災孤児で親戚の淳悟に引き取られる。成長して、花は淳悟との関係から抜けるためと結婚する。新婚旅行から戻ると淳悟は姿を消していた。そして、どうして二人はこういう関係になったのか、花と淳悟の過去の話が描かれる。
それにしても、これはどの読者層に向けたものだったんだろう。